White Paper
【解説】デザインエンジニアリングに必要な「発想」手段
2024年3月28日
デザインエンジニアリングに必要な「発想」手段

【目次】
Exective summary:「競争」から「共創」へ ― その為には何をどのように「発想」する必要があるのか ―
Exective summary:「もやもや」「ふわっと」は具象化する上で必要な工程
「もやもや」から「シグナル」を見つける発想方法① ― 人間中心設計・デザイン思考のアプローチ ―
「もやもや」から「シグナル」を見つける発想方法② ― 体験を時間軸で捉える ―
「もやもや」から「シグナル」を見つける発想方法③ ― バックキャスト・フォーキャスト ―
「シ グナル」から「具象化」する発想方法 ― システミックデザインアプローチ ―
「具象化」から「システム」へ実現可能とする発想方法 ― 構造化シナリオ + シナリオシーケンス ―
企業が抱える課題解決のためのプロセスとして有効な「デザインエンジニアリング」。 第4回では「発想法」に着目し、sdtech流のデザインエンジニアリングを解説します。
「競争」から「共創」へ ― その為には何をどのように「発想」する必要があるのか ―
従来、自社の製品やサービスを企画する上で重要視されてきた基本戦略として、他社製品やサービスとの「差別化」あるいは、いかに「優位性」を保つかに着目されることが多く、飽和状態の中でコモディティ化を防ぐことに社員の力を注ぐ時代でした。時代は変わり「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」が抱える環境破壊への道が、若い世代に繋ぐ責任のある社会や企業にとっても問題視され、企業の存在意義を見直す動きも見られます。また、一見類似とも思えるデジタルプロダクトがスマートフォンや動画配信等を通じ発信され、中にはユーザーとの接点を欺くかのような広告戦略にうんざりされている方もいるのではないでしょうか。
これまでの本記事の中でも挙げたように、不確実で未来予測しづらい「VUCA 」(※1) と言われる状況の中では、新しい価値を生み出しづらくなり、社会や企業は SDGs のように持続可能となるべく課題と目標を掲げ、海外市場との協調の為の ESG(Environment, Social, Governance)に視点を置き、多様性ある人々の生活に対しての価値観とは何かを見出し、創出することをビジョンやパーパスに掲げる企業も多くなり、多様性ある人々の「知」を新たな製品やサービスを構成する因子と捉え「共創」することが将来に向けて重要視されつつあります。

企業の中長期計画や新事業の内容を経営者や責任者が伝えるシーンを目にすることがありますが、現状の問題意識から、不確実な未来を多様な観点で想像・共創してきたことへと話が進み、自社の存在意義と生み出した製品やサービスの価値をストーリーとして言語化し人々に共感される内容であることも多く見受けられます。
今回の記事では、共感されるためのストーリーとはどのように描くのか、多様な価値観をどのような「発想」方法で描き、具象化されるまで成果を創出するのかを考えたいと思います。
「もやもや」「ふわっと」は具象化する上で必要な工程
「共創」はビジネスの世界でもトレンドワードになりつつあり、ストーリーや価値、アイデアを生み出す手段というイメージがあると思います。エスディーテックではその価値やアイデアを「どのように表現するか」を視野に入れ、デザイナとエンジニアが共にファシリテーターとなり、ユーザーや顧客とともに伴走し共創することが必要だと考えています。
製品やサービスを企画・開発する上で、大きなビジョンや数値的な目標、次の工程で何を実行するのか明確であること等、要求や要件を伝えることは当然ですが、その過程の中で抽象的な表現のまま、次のアクションが定まらず 、中々プロジェクトが進まない段階があります。
デザイナの考えることは「もやもや」「ふわっと」としていて良く分からない、とよく言われることもありましたが、デザインという工程は、近視眼⇔遠視眼的な両視点で物事を見ていたり、ユーザー視点⇔作り手 / サービサー視点と行ったり来たりできる考え方が必要な工程です。
「もやもや」状態はある意味「探索中」であり、登場人物が変わることも、いろいろな立場の意見に耳を傾ける状況です。価値や体験を想像し、これから作る製品やサービスの「あるべき姿」の解像度を上げようとしている状態でもあると考えています。

どうしても最短距離のゴールや無駄を省いた効率という目線になりがちですが、「人対モノ」では解決できな い課題が多い時代となり、様々な事象が人やモノやサービス、情報との「接点」が近づき複雑さは今後より加速する中で、様々な事象に目を向けながらでないと新しい価値を創出することは難しいのです。紆余曲折しながらも、そこから見えるもの、考えさせられることがあることで、新しい価値への因子や兆しが見えると考えています。
「もやもや」から「シグナル」を見つける発想方法① ― 人間中心設計・デザイン思考のアプローチ ―
これまでの記事の中でもデザインプロセスとして人間中心設計やデザイン思考の概要について説明しましたが、その中でも「発想→収束」の代表的な手法として以下のようなものがあります。

今回上記デザイン手法をそれぞれ解説することはしませんが(詳しくは下部記載のサイト等を活用ください)、これらを主体的に活用するには、課題となる事象や新しい体験を想像し「問うこと」と「解くこと」双方を行き来して発想することが必要で、なかなかにトレーニングも必要です。また、これら手法にシステムを設計するエンジニアも主体的に「発想→収束」しやすい方法も取り入れる必要性を感じています。デザインエンジニアリングを実践するには、この発想手法の後、システム設計でも役立つ成果となる側面を持つことも必要です。
特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構 https://www.hcdnet.org/
UXコンサルティング&リサーチ by イード U-Site https://u-site.jp/
「もやもや」から「シグナル」を見つける発想方法② ― 体験を時間軸で捉える ―
人間中心設計の中でも「エピソード的 UX」というアプローチがあります。これはユーザーが製品やサービスを利用する過程を時間軸で捉えて、それぞれの過程でのユーザーとの接点とどのようなシステムであるべきかを発想する際にも導入しやすい考え方です。

この手法は「利用前・利用中・利用後・利用時間全体」という比較的「いま現在」のユーザーのライフサイクルを想定して仮説立てることに適していると考えています。「いつ? どこで? なにを?」までデザイナ主導で進むことも多いアプローチですが、エンジニアやクライアントと共にこの考察を行うことで、「いま現在」その体験をさせる「その手段」やどのようなシステムが「必要あるいは適しているのか」を並行して考察・発想することで、実現可能性やリアリティあるストーリーが描けるようになります。
HCD(人間中心設計)における専門的な知識がなくともファシリテーションしやすく、且つ、「自分や近しい人のエピソード」を思い浮かべながら実施でき、発想するにあたり多様な参加者でも適切な仮説が描きやすいアプローチと言えます。
「もやもや」から「シグナル」を見つける発想方法③ ― バックキャスト・フォーキャスト ―
「VUCA」の時代であっても、経済活動を続ける為には、兆しや何らかのニーズのシグナルを見出し、製品やサービスに機能として盛り込み、ユーザーの期待に応え続けなければなりません。当社への業務依頼でも顧客が戦略上ターゲットとしたい時期は様々で、2, 3年以内のローンチを目指していたり、10年 20年を先読みして要件を決めなければならない要求など様々です。
有名な思考方法として「バックキャスト・フォーキャスト」がありますが、デザインエンジニアリングの中で活用する為に、